合格体験記
京都大学工学部工業化学科
2011年度合格
京大合格体験記目次
私は現役時も同じ学科(京都大学工学部工業化学科)を受験しましたが不合格で、一年間浪人生活を送った後に合格することができました。今振り返ってみると、現役時代の勉強方法が受験に負ける勉強方法であり、浪人時代の勉強方法こそが受験に勝つ勉強方法だったと思います。以下では現役時と浪人時を比較することでどういった受験生が合格を勝ち取ることができるのか、失敗と成功そのどちらも経験した私なりの考えで述べたいと思います。
各教科の説明をする前に、全教科に共通して且つ一番大切な勉強方法をここで述べます。
「自分がこれと決めた参考書・問題集を必ず5度6度復習し、絶対に他のものをしない」
復習と聞くと誰しもが甘く見ています。現役時代の私自身が実際そうでした。
上記のことをしっかりと頭に置いて、以下各教科別の勉強方法を読んでください。
《現役時代》
私は西宮市立西宮高校グローバルサイエンス科に在籍していましたので、学校の数学の授業は東大京大受験にも対応できるほどの難度でした。特に数学が苦手だった私は、
- 難しい授業を聞いて、難しい問題の解説を聞けばレベルが上がる
- 正しい値さえ求まればいい
- 計算なんて面倒だ、とりあえず正しく立式できれば答えも出たようなものだ
- 簡単だ、基本だと言われる問題は甘く見て、解答を見て済ます
と言ったようなことを考えていました。結果現役時代の京大理系数学乙(平成22年度)は簡単だと言われていたのにも関わらず、55点/200点でした。
《浪人時代》
現役時の試験結果があまりにも悲惨でしたし、何より「自分の中ではかなり解けたつもり」でいましたので相当ショックでした。ですが落ちた人ほど満足いくような解答が書けたと思っていたにも関わらず、点数は自己採点のものより相当低いというような事態がよく見られます。私は一年間本当に猛反省しました。浪人時代の勉強方法、勉強に対する姿勢はこうです。
- 授業を聞いて自分は賢くなったと錯覚していることが一番危険だ
- 数学の基本の基本、必要条件と十分条件を自信を持って区別し解答に書けるか
- 計算ミスをすることが何よりも一番恥ずかしく、話にならない、点数にならない
- 答えが合うまで計算は何度もやり直し、計算にかける時間を無駄と思わない
- 一番難しいのが基本の部分であり、手強いと言われている問題のほとんどが基本が絡み合っているだけのことである。
- 小手先の受験テクニックほど試験場では使えない
おおよそこういうことに気付いて直しただけで、浪人時代の京大理系数学は148点/200点でした。
数学の具体的なアドバイス
数学の具体的なアドバイス⇒数式が複雑ですのでHP上では掲載を割愛させて頂きます。
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《現役時代》
英語は得意科目で京大英語は特に得意でした。次のことを徹底して訳作りしていました。
- 英文が与えられれば文構造が把握できるまで考える
- 主語、動詞、目的語、補語、修飾語等に正確に分類できるか
- 単語の意味が複数個ある場合、そのどれにも必ず目を通す
- 京大英語のような内容の高度な英文を訳した後にその英文において論理的に正しい訳になっているかじっくり考察する
- 京大英語でありがちな知らない単語に出会ったときは、知らなかったと落胆するのではなく出題者は受験生が到底知らないであろう単語をあえて出しているのだから前後の文脈を用いて考えるとともにそれも一つの大きな問題であるのだと自覚する
以上のことを強く意識して取り組んでいたところ、現役時の京大英語は85/150でした。
《浪人時代》
英語が得意だった私は浪人期間中に新しいことを学んでもっと得意にしてやろうと考えていました。しかし以前得たものを磨くのではなくこうした新しいものを取り入れると考えたことが大きな間違いでした。具体的には次のようなことを取り入れました。
- 日本語が前から順に情報を取っていくのだから英語も同じで文構造云々よりも前から情報を取っていく訓練をすればネイティブと同じ思考になりより英語らしい英語になる。
これによって前から順に情報を取るので恥ずかしいことにそれまで丁寧に意識してきた語句の働きや修飾関係を意識しなくなり現役時代まで積み上げてきた構文把握力は一気に崩れ去りました。どの程度英語ができなくなったかと言うと、笑い話では済まされない域で、現役時京大模試で偏差値60程度あったものが何と浪人時の秋の京大模試では偏差値37にまで低下してしまいました。
私自身浪人時代の勉強方法が間違っていたとは思いません。実際にこの方法で驚異的な学力の伸びを見せた人もたくさんいました。しかし初めに書いたように今まで自分が積み重ねてきたことを復習して磨くことをせず疎かにしたことが何よりもの失敗だとこのことが物語っています。
結局現役時の状態に戻すので精一杯になってしまい、浪人時の京大英語は88点/150点でした。
理系が勉強に困ってしまう京大理系国語の特に現代文ですが、これに関しては私自身現役時も浪人時も解答作成に関して一貫して取り組んでいたことがあります。
- 主観は絶対に書かない
- 具体例を書かない
- 何となく大事そうな抽象部分を書くようなことは一番のタブー
- 必ず解答は自分自身が分かるような文章を書く(本人が分からない文章は誰が読んでも分かる訳がない)
- 抽象部分というのは文字通り具体的事象を抽象化したものなので解答には非常に大切である。しかしながらそれだけを読むと意味が分かりにくい傾向にある。ここで意味をはっきりとさせるための補助として具体例を頭の中にしっかりと残しておく(下で数学に例えて説明したいと思います)
以上のことを踏まえて主観を押し殺した客観的な作文を書くつもりで解答を作成していました。この手法で京大国語は現役時49点/100点、浪人時38/100点でした。
ここからは上のたとえ話をします。数学において数列の分野を解く際、具体的に
数列
1、3、5、7、9、...
が与えられたとして、一般項を求めよと出題されれば、もちろん一般項2n+1を求めれば一番高い点数がもらえます。当然のことながら数列をさらに
1、3、5、7、9、11、13、15、・・・、99、101、...
と延々と書き足しても一切点はもらえません。
ではこうした具体的に書かれた数字は何の意味もなさないのでしょうか。
国語の具体的なアドバイス
国語の具体的なアドバイス⇒HP上では掲載を割愛させて頂きます。
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<<中略>>
まさに京大が求めている解答が書けるというわけです。
私が現役時代より一番得意でかつ一番好きな科目でしたので、浪人時代もずっと同じことをし続けていました。
- 化学を暗記科目だと考える、あるいはなぜそうなるのかが分からないから結果だけを覚えようとするのは一番のタブー
- 化学全体を支える理論化学の理解にしっかりと時間を割く
- 京大の有機化学は難しいが時間をかければ必ず解けるので最初は時間をかけ徐々に
タイムトライアル形式でスピードをあげる
といったことです。
例えばセンター化学の最初の方でよく目にする分子の形に関する問題について、水は折れ線型、二酸化炭素は直線型、メタンは...などのように暗記されている方は多いのではないでしょうか。センターに対応できればこの手の問題は暗記でも構わないと考えるかもしれませんが、決して京大の化学に関係ないわけではありません。むしろ京大の化学においては論述などで、なぜこうした分子の形になるのか、そうした結果分子の形に対称性あるいは非対称性が生じるのか、同時に分子内の極性が打ち消され無極性分子になったりあるいは水素結合を作ったりするのか、と言ったことを聞いてきます。一見解答しにくい問題に見えるかもしれませんがこれらは理論化学の初めの方で必ず触れます。
決して化学は暗記する必要がありませんし、何よりもまず理論化学を深く理解しておけばその応用は有機化学にだって大いに使うことができます。「次の有機物質は水あるいはエーテルのどちらに可溶か」「次の有機物質を沸点の順に並び替えよ」「次の有機化合物の酸性度の高い順に並び替えよ」などの問題は暗記するものではありません。むしろ京大は暗記することを求めていません。理論化学を理解し応用できているかを見ています。
私の中では点電子式と電気陰性度の定義とおおよその順序さえ知っていれば京大化学で論述しにくいと言われている問題はほとんどが対処できるように思います。
今までのどの科目も受験生の方たちそれぞれが選んだ参考書を大切にしてもらいたいと思いあえて私が勧める参考書などは書かなかったのですが(どの参考書も結局は似ています)、物理だけは京大物理に対して本当に有効だと思う参考書を紹介させていただきます。『教学社 新体系物理I・II
』です。
この問題集に掲載されている問題は京大物理と形式が大変似ており、誘導に乗りながら穴埋めをしていき、最終的にそれらすべてをまとめて公式であったり、新たな物理的性質を見出したりすることが多いです。
また京大物理にはよく目にする微分や積分の概念が入った受験生が嫌うタイプの問題も多く掲載されています。
私はこの問題集を現役時から愛用していて浪人時ももちろん愛用していましたし、大学に入った今ですらヒントを得るために読み返すほどです。それほど本質を射抜いた問題集であると私は感じております。
物理は現役時から好きで得意でしたので化学と同様、浪人時も次のようなことに注意して勉強しました。
- 公式ではなく公式の導出過程を大事にする
- 運動方程式はどんな複雑な状況であれ注目する物体にかかっている力が図示できれば必ず解けるので絶対に間違わないようにする
- エネルギー保存則、運動量保存則は運動方程式を積分して得られたものであるということを理解する。
- 微小な変化量と問われれば、裏では微分の話が進行していると理解する
- 電磁気の融合型問題においては運動方程式との合わせ技で微分や積分をすることにより必ずと言っていいほど解けることを理解する
- 京大物理が大好きな近似計算においては日ごろから計算の訓練を行っておく
上記のことができれば飛躍的に物理の学力は伸びます。
しかしながらここで大きな問題があります。それは微分積分を用いているということです。『教学社 新体系物理I・II
』には微分積分の概念を用いた問題が多く掲載されていますが、一般的な教科書ではあまり出ていません。そのため微分積分を用いることに抵抗を持つ受験生も多々見られます。そうした方々が受験前に焦って微分積分を物理で用いようとするとそれこそ今までとは全く違う考えを導入してしまいますので余計に物理が理解しづらくなってしまいます。「微分積分が使えればカッコいい、エレガントだ」などと言った軽い気持ちでは決して使わないで下さい。微分積分を使いこなすのにはかなりの訓練とかなりの時間が絶対に必要です。このことだけは肝に銘じてください。
私はあまり勉強を頑張る風潮が無かった中学から進学校に進んだため、入学当初は勉強が理解できませんでした。入学早々のベネッセのスタディーサポートと言われる学力診断ではグローバルサイエンス科40人クラスの中で37位だったことを覚えています。初めての中間テストの数学も40点代と本当に悲惨でした。周りが賢すぎて、またその上私自身が理解できないということの相乗効果で進学校に進んだことを本当に悔やむ毎日でした。中学校時代にバスケットボール部に所属していましたが高校ではあまりにも成績が悪かったので親がどうこう言ったわけでもなく部活動などできる心持ではありませんでした。それが大きな原因で高校時代は部活動をしませんでした。
しかし本当に悔しかったです。何をやってもベベ...、そんな毎日でした。数学は本当にできなかったので、唯一新しく習い始めた化学でみんなと勝負できないかと考えるようになりました。それが私の化学好きの始まりです。猛勉強した結果、一回目の期末テストでクラス1位を取ることができました。高校に入学してからは気持ちが沈んでいたのでこの上ない喜びでした。やはり努力は裏切らないとその時確信し、そこから他の科目も猛勉強しました。
そうして迎えた一年生最後の進研模試はなんとクラス1位、もちろん校内280人中1位を取ることができました。志望校も入学当初は親に、もし地方でも国公立ならどこでも大歓迎だと言われていたくらいなのに、やがて神戸大学を志望し、そして二年生では大阪大学を志望できるほどにまでなりました。そうして二年生末ごろ担任の先生に「ぜひ京都大学を目指してみてはどうか?」と声をかけてもらいました。自分にとって京大などとは雲の上のさらにそのまた上の存在でしたので本当に驚きました。私以上に両親の方が信じられなかったらしく「京都大学なんてこの子に到底行けるわけがない」と発狂しそうな口調で三者面談のとき担任に話していたことを今でも新鮮に覚えています。
そこから確かに勉強法に間違いはあったものの一年間の浪人生活を経て実際に京大に受かることが出来ました。
こんな高校生活を送っていましたので、勉強できない苦しみを重々知っていますし、努力して正しくまじめに勉強すれば不可能なことなどないと自分自身の体験を以てしてはっきり断言できます。
私が体験したことの多くをぜひ受験生の方に知ってもらいそうして少しでも学力の向上、はたまた合格への一歩としてもらえれば私は嬉しいです。
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